ミミズ


ミミズは土の中を掘り進む。
土の中を掘り進みながら土を食って、その中の
養分を吸収して生きている。


ミミズを輪切りにしてみると、よく分かるのだが、
ヤツらは体の真ん中に消化管が通っていて、
頭からお尻まで、ずっと筒状なのだ。


そして、あんぐりと口を大きく開けた状態で
土の中を進んでいく。
ヤツらの消化管は「蠕動運動」などしないので
自らが前進することによって、口から取り入れた
土を肛門方向へと押しやるのだ。


いいかい。


ヒトは自らが食ったモノを自力で押し出そうとする。
食っては出し、食っては出しの繰り返しだ。
ヒトが生きていくためには、排泄という行為が
不可欠なのだ。


ミミズの場合はそうじゃない。
食ったモノを押し出すのではなく、自分の方が動くんだ。
そう、食ったモノはその場を動かないのだ。


ヤツらは自分に関わるものを変えたりしない。
取り込んだものを消化する訳じゃない。
「そこ」にある養分を少しだけいただいて、
ひたすら前に進んでいく。
跡に残るものは、ちょっぴり軟らかくなって
風通しが良くなった土で構成された、さっきまでと
何一つ変わらない暗黒の世界だ。


周りの暗闇も喧騒も静寂も、俺には関係ねーよ、
とでも言わんばかりに、黙々と進んでいく。
行き先なんて決まっている訳がない。
ヤツらは生きるために前進する。
終始同じペースで。
自分のペースで。
それだけのことだ。


そしてその生を終えるとき、自分自身の周囲の土に
溶け込んで消えてゆくのだ。


少し羨ましいとも感じてしまう生き方である。