一歩ずつ


人生を一歩ずつ歩んでいくこと。


それは僕たちに科せられた、長い長い旅路だ。
行き着く先は、生まれたときから判っているんだ。
そう、そこは生きとし生ける物すべてが、
いつかは辿り着く場所なんだ。


問題はそこまでの道程がどうだったかということだよ。
時に暖かい春の陽だまりの中をのんびりと進み、
時に厳しい吹雪の中を手探りで歩み、
また、時には暗闇の中を覚束ない足どりで
少しずつ少しずつ歩いて来たんだろう?


君の人生の中で、僕と関わった時間は
ほんの僅かな時間だ。
だけど、これからも途切れることは無いだろう。
時代に連れて細くなったり、太くなったりするかも
知れないが、この関係はずっとずっと続いて
行くだろう。


そして最後は、どちらかが先に言うんだ。
「今まで、ありがとう」って。


残った方はその言葉を胸に抱いて、また一歩ずつ
歩いて行くんだよ。
違う誰かに同じ言葉を伝える日まで。