口内炎


口内炎がよくできる。


体質的に口内炎が出来やすい上に、ぼうっとしながら
モノを食べていると頬の内側をグッサリ噛む。
そうすると噛んだ跡が必ず口内炎へと発展する。


常に1〜2個の口内炎を飼って生活しているのが
僕の基本スタイルだ。


ダヴィンチコードに出てきた、イエス・キリストの痛みを
常にその身に感じながら生活をしているストイックな
オプス・デイの修行僧みたいに24時間痛みに耐えている。


まるで口の中に装着したシリスのベルトだ。


この痛みは取り除くことはできない。
誰かに理解してもらうこともできない。
ただただじっと耐えるしかない。
耐えているうちに口内炎は自然に治って行く。
そしてほっとしていると頬の内側をまたグッサリ噛む。
この繰り返しだ。


時々自分でも信じられないような箇所を噛むことがある。
人間は意識的に舌を動かすことが出来るが、食べている時は
かなり無意識に大きく舌が動いているものらしい。
 

舌は敏感なセンサーだ。
どういった物体が口の中に入ってきたのかを無意識に探ろうとする。


味覚というのは甘味・辛味・苦味・酸味・があり、舌の部位によって
それぞれの味を感知する場所が違うのだそうだ。
味を感知する味蕾という器官に、それぞれの味の成分がキャッチされて
はじめて脳は味を感じることが出来るのだ。


だから舌は人の意識とは関係なく味を探ろうと動き回る。


多分、モノを食べているときの口の中をマイクロスコープで観察すると、
舌はより味を敏感に感じ取ろうとして、口の中をグロテスクに
上下左右にグネグネと這い回っていることだろう。
舌は味という快楽を本能的に追い求める具現化したリビドーの塊なのだ。


そして、その欲望を戒めるかのように犬歯の釘が
大きなハンマーで打ち込まれる。


そして僕はまたイエス・キリストの痛みを感じながら
ストイックな修行を始めるのだ。