【書評】「世界の神々」がよくわかる本


〜ゼウス、アポロンからシヴァ、ギルガメシュまで〜
というサブタイトルが付いている。


著者は「造事務所」。
企画・編集会社である。
脳トレ」や「ビジネスマナー」の本の編集などを
している会社だ。


監修は、東ゆみこさん。
肩書きは「神話学者」。
お茶の水女子大学院博士課程を終了後、東京外語大・
学習院大学などで非常勤講師をなさっている方だ。


「世界の神々」といっても、キリスト教や日本の神道
お話は出てこない。
「宗教」の本ではないのだ。


このお話の中に出てくる「神」は、どちらかというと
僕たちには寓話としての方が馴染み深い、世界の神々の
物語を個人(個神)別に、特に特徴的な物語を中心に
1ページずつ解説していく本である。


取り上げられている神話は、ギリシャ神話・北欧神話
ケルト神話インド神話メソポタミア神話・エジプト
神話・クトゥルー神話の7つの神話である。


ギリシャ神話やエジプト神話はその中でも、馴染みの
あるお話だろう。
ギリシャ神話なら「ゼウス」を筆頭に「ポセイドン」
「ハデス」「アポロン」「ヘラクレス」「アテナ」
など、聞き覚えのある名前も多いはず。


エジプト神話なら「ラー」「オシリス」「アメン」
「ホルス」などピラミッドの下に眠るファラオの
副葬品に見られる、頭が動物の神々の印象が強いの
ではないだろうか。


しかし、僕が興味を持ったのは、切れ切れの単語として、
名前だけは聞いたことはあるものの、実際の話を
知らなかった、他の神話の神々だ。


北欧神話の「オーディン」「ヴァルキリー」。
インド神話の「シヴァ」「ヴィシュヌ」「ハヌマーン
メソポタミア神話の「ギルガメシュ」「エンキドゥ」
「イシュタル」…


神話の中で、彼らは時として悩み、時として羽目を外し、
他人を欺き、抜け駆けをし、人間以上に人間らしい
逸話を残している。
物語として秀逸なものが多い、いや、何世代にも渡って
語り継がれているお話だ、秀逸で当たり前なのかも
知れない。


中でも特に僕の興味を引いたのは「クトゥルー神話」だ。
この神話は他の神話と違って、アメリカの作家である
H.P.ラヴクラフトによって20世紀に入ってから創作された
神話なのだ
その後、様々な作家がアレンジを加えて、お話が作り上げ
られたものらしい。


まずは登場する神々の容姿が、どれをとっても「人」の
形をしていない。
まずは主役(?)である「クトゥルー」だが、水の
属性を持つ、海の魔王だ。
巨大な体に蛸そっくりの頭部(パイレーツ・オブ・
リビアンのディヴィ・ジョーンズを思い浮かべて
頂ければいいだろう)とコウモリの羽根をもつ邪神だ。


その他にも、首から上が円錐状になっていて顔が無い
ナイアルラトホテップ」、実体が無く、精神感応で
近づこうとした者は悪夢に憑かれて変死するという
「アザトホース」、虹色の球体の集積物のような
姿を持つ「ヨグ・ソトホート」、可塑性の原形質から
なる不定形生物である「ショゴス」など、禍々しくて
おどろおどろしい登場人物(?)に計らずも胸が
高鳴ってしまうのであった。
(そんなのが「神」なんだぜ!!どう思う?)


僕はちょっと「ラヴクラフト全集」が欲しいと
思ってしまった。
しかし、全7巻からなる怪奇小説をそう簡単には
読み終えることは出来ないだろう。
普通はなかなか手が出ない代物だ。


だが実に興味深い。
来年あたりには買っているかも知れない。