レンタルお姉さん/荒川龍

killtheking2006-10-09



これはルポライターである、荒川龍氏が「レンタル
お姉さん」と呼ばれる人たちと同行取材をして書いた
現実のお話しだ。


レンタルお姉さん」とは「ニュースタート事務局」
というNPO法人が、「ニート」と呼ばれる引きこもりを
外社会に引っ張り出すために派遣している人達のことだ。
通常、引きこもり本人の両親から依頼を受ける事が多く、
手紙を送ることから始め、電話〜直接訪問、共同生活などを
経て、社会へ復帰させる手伝いをしている。
(※本来イギリスで発祥したNEETとは「Not in Employment,
Education or Training」つまり「就業、就学、職業訓練
いずれもしていない人」という意味であったが、日本では
若干意味合いがが変わってきており、「自宅に引きこもって
社会生活を絶っている若者」のことを指す場合が多い。)


本来、引きこもりとなる人達には、いじめとか病気、受験・
就職の失敗などの理由で精神的にダメージを受け、
自分は社会に必要の無い人間だと思い込んでしまうこと
から始まるようである。
この本には、そんな「引きこもり」の人達を定期的に訪問し、
徐々に信頼関係を築いて社会に適応できるようにさせていく、
そんな「レンタルお姉さん」たちの奮闘振りが詳細に渡り
書かれている。


さて、乱雑に言ってしまうと「引きこもり」はその人の周囲の
環境によって左右される部分が大きいと思う。
親の考え方、友人の存在、学校の先生や同級生、職場の
上司や同僚の意見…
好むと好まざるに関わらず、そういった人達からの
影響力はとても大きいものだろうし、必ずしもそれが
良い方向に働く力とは限らない。
その結果として、社会から取り残されていく人が
とりもなおさず「引きこもり」となってしまったり
するのだろう。


何かの原因で他人との関係が良好に保てなくなり、
何もかも放り捨てて逃避したい衝動に駆られることは、
誰にでもあるのではないだろうか。
(そこを救ってくれる「力」が、時に「友人」であったり、
「占い」であったり、「自己啓発セミナー」であったり、
「宗教」であったりするのかも知れないが。 )


その中で自分の居場所を見つけられず、社会生活から
逃避してしまった人達が、いわゆる「引きこもり」と
呼ばれるだけのことであり、どんな人でも他人事ではなく、
ある意味「紙一重」で正常な状態とバランスを保って
いるのであろう。
世の中と関わりを持たずに生きている、「引きこもり」の
彼らのその姿は一種の「生きている自殺」なのかも知れない。


この本を手に取ったきっかけは単純なことである。


ある方から教えてもらってこの本を知った。
そしてその時に紹介されたのが、この本の冒頭に
出て来る「川上佳美」さんだったのだ。


時々彼女から「今度こんなメディアに載ることになりました」
というメールが来る。
僕は、彼女に「頑張って」と返信して、それらのメディア
を出来る限りチェックして、時々感想を返す。
だが、彼女「川上佳美」が実際にどんな苦労しながら仕事を
しているのかは、僕は知らない。
実際に仕事現場を見たことはないからね。


ただ、華奢なその体の中に、驚くほどのバイタリティと
行動力と優しさを秘めていることは間違いない。
そしてまた彼女も一人間として、彼女なりの悩みを抱えて
生きている。
ただ、仕事のことを話している時の彼女の表情は輝いていて、
誇りと信念を持ってこの仕事に就いている事は容易に窺い
知ることができる。


そう、救いの手を差し伸べる側は、その行為によってまた
自分も救われているのだろう。


※10月11日 日本テレビ系の朝の番組「スッキリ!」で
全国放送される予定。
また、10月17日発売の週刊SPAに掲載予定。