2006-01-01から1年間の記事一覧

【書評】疾走(上・下)/重松清

この本には救いが無い。 そう思った。 主人公のシュウジはどこにでもいる 普通の中学生だった。 寡黙な父と、ひたすら家族のために尽くす母、 勉強ができる自慢の兄、幸せを絵に描いた ような家庭だったはずだ。 それがほんの些細なことから、ボタンの 掛け…

【書評】リアル鬼ごっこ/山田悠介

結末は読めていた。 最後はそうなるだろうと思ってたんだ。 ただ、そこに至るまでの経緯だよ。 エンディングまでの、ありとあらゆる場面で 次々と予想を裏切られるんだ。 「ここまで来て、こいつが死んじゃうのかよ! そのあと、どう展開するつもりなんだ?…

【書評】東京を江戸の古地図で歩く本

mayumiさん。 そう、貴方ですよ。 貴方のために買った本です。 河出書房新社発行、初版は2004年7月です。 タイトルの通り、東京/江戸にまつわる 楽しいエピソードに江戸の古地図と 現東京の地図が併記されているという 趣向の本です。 まずこの本は、江戸の…

【書評】「世界の神々」がよくわかる本

〜ゼウス、アポロンからシヴァ、ギルガメシュまで〜 というサブタイトルが付いている。 著者は「造事務所」。 企画・編集会社である。 「脳トレ」や「ビジネスマナー」の本の編集などを している会社だ。 監修は、東ゆみこさん。 肩書きは「神話学者」。 お…

自転車

中学生の頃、夏休みになるのを待ち侘びて 僕たちは自転車で海に向かった。 3台の自転車を連ねて、目指すのは 山をひとつ越え、更に橋を渡った先に 浮かんでいる、瀬戸内の小島だ。 僕たちは訳もなく競争した。 先に行く者は遅れた者を気にしながら。 後を追…

【書評】西の魔女が死んだ/梨木香歩

「西の魔女」はおばあちゃんだ。 僕たちが子供の頃は、こんなおばあちゃんが 誰の身の回りにも居たのではないだろうか。 中学生の「まい」はちょっと独特な雰囲気を持つ 女の子だ。 当然誤解を受けることも多い。 その誤解は時として「いじめ」に発展する。 …

回路

僕の胸の中にある回路。 不完全な回路。 回路が不完全であるがゆえに、 僕は傷つき苦しむ。 回路が不完全であるがゆえに、 悪魔の笛の音に踊らされる。 左右非対称のこの容姿は、善と悪の狭間に揺れる 精神のアンバランスさが表面化したもの。 正義の赤、悪…

ツバメ

超低空飛行で、僕の足元をツバメが横切った。 そうか、もうツバメが飛び交う季節になったんだ。 そう思いながら照りつける太陽を軽く睨みつけた。 今日の最高気温は34℃になるだろうと、朝の ニュースで確か言っていた。 もっとも都内のビルの狭間では、体感…

【書評】ドミノ/恩田陸

これも中野の都立家政商店街の古本屋で購入。 最近ミステリー物の重い内容のものばかりを 立て続けに読み、食傷気味になっていたため、 違う系統の小説を読もうと思い、この本を 選びました。 (特に、一番最近読んだ貫井徳郎氏の 妖奇切断譜が重かった。) …

【書評】天に遊ぶ/吉村昭

先月、1ヶ月間の読書記録を日記に書いたら、 予想外に反響があったのと、まとめて書くと これまた予想外に大変だったので、読む度に 少しずつ書評を書いていこうと思います。 天に遊ぶ/吉村昭 7月30日に中野の都立家政商店街の古本屋で購入。 その日の内に…

PUT ON YOUR BRAKE

交通事故を起こさないための極意を話そう。 自分が右へ行きたいときは、右へハンドルを切る前に 右側を確認したまえ。 自分が左に行きたいときは、左へハンドルを切る前に 左側を確認するのだ。 単純なこと。 誰でもできることだ。 本当に難しいのは、前へ進…

ランドセルのシャーロック・ホームズ

あれは、小学校の何年生のことだったろうか、 僕らは学校の図工の授業で焼き物を作った。 粘土を円盤状に平たくしたものを土台とし、 別の細長く紐状に伸ばした粘土を上へ上へと グルグルと巻き上げて、僕らは縄文人よろしく 湯呑みを作ったのだった。 当然1…

死について②

「ガリバー旅行記」などで知られている ジョナサン・スイフトは死について、 こんな言葉を残している。 「死ほどに、自然で、不可欠で、不偏なものが、 神の摂理によって、人間への災いとして目論まれた などというのは、ありえないことである。」 昔、ウチ…

次の一歩

家族の中の一部となっていないか? 会社の中の一部となっていないか? 判で押したような日々を送っていないか? 他人から与えられた仕事をこなすことが、 自分の行うべきことを他人に考えてもらうことが、 どこかで心地良いと感じていないか? 大きなうねり…

ホームレス

ホームレスのH(名前は伏せておく)が最悪の人生を 送っているのは、彼がホームレスだからじゃない。 ホームレスである現状から脱出しようとしないこと こそが最悪の人生なのだ。 そう、傍から見ればね。 本人にとっては、それが心地良いのだ。 だから、その…

読書感想(7月)

昨日、気軽に7月に読んだ本を書き並べたら、予想外に 問い合わせが多かったので、それぞれの本の感想を 追記しておきます。 ・石井裕之/なぜ、占い師は信用されるのか? ※一種のビジネス本ですね。 「コールドリーディング」の技術を活かして、 営業力をUP…

読んだ本・観た映画(7月)

読んだ本 ・石井裕之/なぜ、占い師は信用されるのか? ・田口ランディ/もう消費すら快楽じゃない彼女へ ・乙一/失はれる物語 ・乙一/GOTH(夜の章) ・乙一/GOTH(僕の章) ・山本夏彦/日常茶飯事 ・妹尾河童/少年H(上巻) ・妹尾河童/少年H(下巻…

桜貝の爪先

自分で気が付いている、いないに関わらず、誰にでも 「癖」というものがある。 まあ、数え上げればキリが無いくらい、他人に迷惑を 掛けない可愛いものから、他人が見ると眉をひそめる ような不愉快なものまで様々だ。 僕の場合も、御多聞に漏れずいくつかど…

生命について①

先日「死」について書いたので、今回は「生」について 書いてみようと思う。 ヒトに限らず「動物」と呼ばれる類(哺乳類・爬虫類・ 鳥類・両生類など)は全て共通で、卵子に精子が受精する ところから生命はスタートする。 最初はたったひとつの細胞だ。 だ…

SINGING IN THE RAIN

どこからともなく僕の視線の中に真っ黒い物体が 飛び込んできた。 クロアゲハだ。 小雨混じりの新宿左門町のアスファルトの歩道のうえで、 ひらりひらりと力強くしなやかに、高く低く舞っている。 まるで、女性ピアニストが弾くコンテンポラリージャズの 譜…

体調不良

今、僕は体調不良である。 その理由はよく分かっている。 肩凝りだ。 数日前から背中に鬱血の塊があるような気がしていて、 ずっと偏頭痛がしていた。 だから、一昨日はクイックマッサージに行って 25分の首肩集中コースを施術してもらった。 しかしその甲斐…

ジェンガ

土台を引き抜いて、上に積み重ねる。 土台を引き抜いて、上に積み重ねる。 成長しているように見えるが 棒の数は1本たりとも増えていない。 土台を引き抜いて、上に積み重ねる。 致命傷となる最後の一本を 引き抜いてしまうまで。

ミミズ

ミミズは土の中を掘り進む。 土の中を掘り進みながら土を食って、その中の 養分を吸収して生きている。 ミミズを輪切りにしてみると、よく分かるのだが、 ヤツらは体の真ん中に消化管が通っていて、 頭からお尻まで、ずっと筒状なのだ。 そして、あんぐりと…

呼吸

僕たちの周囲は隙間なく空気で満たされている。 空気とは、一般的に窒素78%・酸素21%・アルゴン1%・ その他微量の炭酸ガス・水素・ネオン・ヘリウムの混合物だ。 そして、僕たちが呼吸をするということは、その空気を 気道から肺に取り込み、さらに肺胞で…

2.996:2

僕も一応プロフィールに「ヴォーカリスト」などと謳っているので、 たまには音楽について書いてみようと思う。 少なからずどんな音楽も、音と音との重なり(和音)で構成されている。 3度音程、5度音程といった音程差で和音は変化する。 当然、組み合わせる…

二桁掛け算

今日は面白い本を1冊紹介したいと思います。 その本は、「二桁のかけ算一九一九(イクイク)」。 (出版:ライブドアパブリッシング 定価942円) ライナーノーツ(?)を見てみましょうか。 〜世界には二桁のかけ算をやっている国があるって知ってました? た…

月と深海魚

僕は暗い海の底で、目を覚ました。 目を覚ましたとはいえ、深海2,000メートルのここには かすかな光すら差し込むことは無い。 もっとも僕には生まれつき目が無いので、何かが見える はずもないのだが。 人間は僕のことを不思議な生き物と呼ぶ。 想像を絶する…

神の見えざる手

人は神が造られた。 旧約聖書にはそう書かれている。 まあ、それはいいだろう。 今日はそこは議題としない。 旧約聖書によると、神は7日間を掛けて地球上の環境を整えてから アダムをその姿に似せて造られた、と書いてある。 そこを考えると、ただ戯れに人類…

駐禁対策人形「コックリ君」

いらっしゃいませ。 今日はどういった品物をお探しで? ほう、6月1日から施行された、駐車違反取締りの 監視員の巡回が厳しくて仕事にならない? 何かいい対策ができる商品をねえ… そうですよねえ。 今やほんの3分間車から離れていただけで、 写真撮られて「…

ユビキタス

僕が移動するときに、とても世話になっているツールがある。 au携帯アプリの「EZナビ」だ。 これを持ってからは、以前のように出発前に慌てて 目的地までの電車経路を調べたりしなくてすむようになった。 行き先を入力すれば、そこに向かうための徒歩経路・ …